原始的メディアだからできることがある--『私のフォト・ジャーナリズム』を書いた長倉洋海氏(フォトジャーナリスト)に聞く
実像と虚像のすき間を埋めようと、世界の隅々まで出掛けていくフォトジャーナリスト。「世界は私たちが思う以上に、複雑で、そして広く豊かで、美しい」という。
──お帰りなさい。インタビューをお願いして数カ月。日本を留守にしていらした。
帰りの船便がなくて。南太平洋、赤道直下のカピンガマランギ環礁にいた。行くときはヨットをチャーターし、揺られ揺られて5日間。渡った島には、船が3カ月から半年に一度しかこない。水上飛行機もない。
帰りは、本島で売るための豚や鶏の糞尿にまみれながらの船旅。「写真の旅」自体は、終わってみれば楽しいものとなるが、その最中はしんどくてつらい。しんどくてつらいが、先々で新たな発見の喜びがあるのはわかっているし、それがしんどい旅を乗り越えさせる力になっている。
──これも本にするのですか。
7月1日から20日にかけて「北の島、南の島」のタイトルで写真展を予定している。本の刊行も決まっている。一昨年に取材したグリーンランドと合わせて。
地球温暖化で氷河が溶け、海面が上がっている島々がある。そこにどのような人たちが住んでいて、どんな生活があるのか。僕の知らなかったこと、見たことがなかったことがたくさんあった。それを伝えたい。