多くの人が誤解する「DX人材」に必要な真の能力 DX人材=プログラミングできる人ではない

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③の能力について

DX人材の要素として特徴的なものがこの③「デジタル技術を活用した新しい解決策を考えることができる能力」だ。この能力と後述する④の能力を同じように理解してしまっていることが多いので注意が必要だ。

この能力は、後述する④の能力と異なり、必ずしもデジタル技術自体を使えなくてもいいのだ。

例えば、優秀なコンサルタントは、実際にプログラミングはできないが、各デジテル技術については理解が深く「この技術を使えばこんなことはできそうだ」という感じでデジタル技術でできることの要素を抽象化して把握している。そして、実際に顧客の課題を解決する際に、「この技術を使えばこんな新しい解決策があるかもしれない」と仮説を立てて検証していく。

もう少し卑近な例だと、例えば膨大な業務を抱えたチームに若い社員が入ってきて「この業務は、ツールを入れて少し開発をすればかなり効率化できそうですね」と仮説を立て、実際に社内のエンジニアに依頼したら、あっという間に業務が大幅に効率化された、というようなケースだ。実際にこれに近いことを経験した方が増えてきているのではないだろうか。このケースの場合、若い社員は自分自身がプログラミングができる技術者というわけでは決してない。しかし、今のデジタル技術があれば業務を効率化できるはずだ、という仮説を立てて解決策を創ったのである。

デジタル技術でできることを把握

こうした例のように、この能力とは、デジタル技術でできることを把握して、解決策に応用することができる能力である。

この能力を伸ばすために必要なのが、たくさんのデジタル技術に触れて学んでその特徴や利点を把握することだ。そして、こうしたデジタル技術の本質的な要素を引き出しにしまって、さまざまな解決策を考える際にいろいろと組み合わせることができるようになることが重要だ。

繰り返しになるが、あくまで重要なのは能力①と②であり、この能力は②を効果的に創るためにデジタル技術を駆使する、という位置づけになることは肝に銘じてほしい。

④の能力について

④の「決められた解決策をデジタル技術を使って実行できる能力」は、ハードスキルとしてデジタル技術を具体的に使える能力だ。プログラミングなどを駆使して実際にサービスを作ったり、解決策を実行したりすることができることが条件になる。一般に理解されるエンジニアが備えている能力といえる。

実は、DX人材というとこの能力を持っている人だと勘違いされることが多い。ただ、この能力はあくまでエンジニアリングとしてのハードスキルにすぎない。本質的な変革を伴うDXにおいては、むしろここまで説明した①~③の能力の重要性が高まっているといえる。

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