パンタグラフを「付随車」に搭載する電車の謎 電動車に搭載するほうが合理的なはずだが…

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交流・交直流電車ほどスペースの制約が少ない直流電車の場合、T車にパンタグラフを搭載する理由はちょっと特殊な例が多いようだ。前述した289系は改造車故の特殊事情だといえる。

JR四国8000系の1号車8000形はT車でありながらパンタグラフを搭載している。8号車の8500形も新製時はパンタグラフを搭載していたが、現在は撤去している(筆者撮影)
山陽電鉄6000系3両編成。中間の付随車にパンタグラフを2基搭載している(筆者撮影)

JR四国8000系はThsc車の8000形(1号車)とTc車の8500形(8号車)にパンタグラフを搭載していた。これは離線対策で、安定して集電を行うため。なお、現在8500形のパンタグラフは撤去されているが、これは一時期付属編成を2両に減車したことがあり、その際にパンタグラフが隣り合わせになることを防ぐためだ。

直流電車の付随車にパンタグラフを搭載した例としては山陽電鉄6000系も挙げられる。6000系は付随車の6300形にパンタグラフと補助電源装置を搭載し、前後に制御電動車を連結した3両編成、もしくは神戸三宮側にパンタグラフ非搭載の付随車を挿入した4両編成を組み、電動車に走行用電力、全車両にサービス電力を供給している。

東京メトロの事例は?

離線対策という点では営団地下鉄(現東京メトロ)千代田線6000系のCT車6100形と有楽町線7000系のCT車の7100形にもパンタグラフを搭載していた。

営団地下鉄(当時)千代田線6000系のCT車6100形にも新製当初はパンタグラフを搭載していた。このパンタグラフは後に撤去されている(筆者撮影)
クル144形の屋根上にパンタグラフが搭載されているのがわかる。このパンタグラフは車両基地や工場内で架線がない区間に車両を押し込む際に使用していた(筆者撮影)

これは回生ブレーキの安定性を高めるためだったが、いずれも後年パンタグラフは撤去されている。

変わった例としては国鉄形配給車のクル144形にも走行用パンタグラフを搭載している。このパンタグラフは工場などで架線のない車庫内に車両を押し込む時に使用するもので、その際はクモル145形のパンタグラフを降ろしてクル144形から電力を供給していた。

今回登場したアルピコ交通20100形も直流電車としてはちょっと特殊な事例であると考えられ、今後もレアなケースとなるのではと思われる。

松沼 猛 『鉄おも!』編集長

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まつぬま たける / Takeru Matsunuma

大阪府出身。明治大学文学部卒。株式会社三栄書房に20年間在籍し、編集者として世界各地を飛び回った。2008年12月から『鉄道のテクノロジー』編集長を務めた後、2013年5月に独立。現在は『鉄おも!』編集長のほか、『鉄道ジャーナル』『ニューモデルマガジンX』『カーグッズマガジン』、鉄道、自動車関連ムックなどに執筆。

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