東京でホームレスの人々を見かける機会はめっきり減った。報道を見ると、コロナ禍でさらに困窮し、昨年夏の東京オリパラで排除もされたという印象を持つ。ところが、著者はそんな報道を批判する。コロナ禍を機に炊き出しは増えた。排除も国立競技場周辺の一部に過ぎない。排除されたって移動すればいいだけだ。
本書は1992年生まれのルポライターがコロナ禍の2カ月にわたって都庁下、上野駅前、荒川河川敷など転々としながら路上生活を送った記録である。
優れたルポらしく、本書は耳当たりのよい物語を聞かせてはくれない。繰り返し語られるのはホームレスと生活保護との関係だ。生活保護受給を目指すホームレスが、それを搾取する貧困ビジネスに巻き込まれる問題は今やよく知られている。しかし、著者が交わった少なくない者が自ら生活保護というセーフティーネットを断ち切って路上生活を選んでいる。住居などの費用や受給に伴う制限に汲々(きゅうきゅう)とするより自由だというのである。
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