3部作の2作目に傑作ありだ。映画『ゴッドファーザー』がそうだろう。第2次世界大戦で英国がナチス・ドイツと講和を結ぶ歴史改変小説『ファージング』(J・ウォルトン)もそうだった。
日露戦争で日本が負けた架空の歴史を描く本作も3部作の2作目である。1作目の『抵抗都市』(2019年)では敗戦から11年後の大正5年10月、本作では大正6年3月の出来事が描かれる。舞台設定の描写が巧みで話も独立しているため、どちらを先に読んでも楽しめる。
敗戦国の日本は外交権と軍事権を喪失し、日比谷に置かれたロシア統監府の統治下にある。主人公は警視庁の刑事だが、統監府が追う事件に日本の警察は手出しができない。街ではロシア人の移住が進み、本郷通りは将軍の名を取ってクロパトキン通り、淡路町から万世橋駅までの通りはプーシキン通りと呼ばれる。
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