暗号資産交換所の世界大手FTXが、日本の同業・リキッドグループを買収する。かつて不正流出も経験したリキッドは、新体制でどのように成長を目指すのか。

「Liquid by Quoine」で提供してきた交換所サービスは今後「FTX Japan」へと変わる。(左画像:Liquid by Quoineのホームページより、右写真:FTX)
メジャーリーグで活躍する大谷翔平選手を「グローバル・アンバサダー」に起用したことで、日本の一般メディアでも取り上げられた海外の暗号資産交換所・FTX。バハマに本社を置き、取引高は全世界で五本の指に入る。アメリカの調査会社・CBインサイツによると、企業価値は320億ドル(約3.7兆円)に上る。
そんな成長期待の大きいユニコーンが、暗号資産交換所「Liquid by Quoine(リキッドバイコイン)」を日本やシンガポールで運営するリキッドグループを買収、日本市場に上陸する。3月末をメドに買収手続きを終えた後、サービス名も「FTXジャパン」に改める。なお、買収総額は公表していない。
リキッドグループの2021年9月時点での国内預かり資産は約220億円。預かり資産で国内1位・ビットフライヤーの4%にすぎないが、その動向は見逃せない。同社の栢森(かやもり)加里矢CEOに、買収されるに至った経緯を含めて話を聞いた。
「救済型」の買収ではない
――FTXに買収されることになった経緯を教えてください。2021年8月の暗号資産不正流出を機に、FTXから1.2億ドルの融資を受けたことから今回の話に至ったのでしょうか。
不正流出が起きる前からFTXとは接点があった。FTXのサムさん(創業者でCEOのサム・バンクマン・フリード氏)とは、2019年に台湾で開かれたイベントの壇上で初めて顔をあわせた。
彼がFTXを創業した直後のことだったが、斬新でイノベーティブなプロダクトとサービスに加えて、リスクコントロールを切り口に交換所サービスを作っており、さすがだなと思った。
FTXでは、レバレッジ取引でロスカット(強制決済)が生じにくいように証拠金の算定(クロスマージン導入)を工夫したり、マーケットの急変動でシステムがダウンしないよう設計したりしている。
そのプロダクトを日本に持ってきたいと考え、不正流出が起こる前の2021年春くらいから業務提携の話をしていた。
――今回の買収は「救済型」ではないと。
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