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『NOISE 組織はなぜ判断を誤るのか?』 『人類の歴史をつくった17の大発見 先史時代の名もなき天才たち』ほか

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その弊害はバイアス以上 統計的思考、情報収集が肝要
評者/BNPパリバ証券経済調査本部長 河野龍太郎

『NOISE 組織はなぜ判断を誤るのか?』ダニエル・カーネマン、オリヴィエ・シボニー、キャス・R・サンスティーン 著/村井章子 訳(書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします)
[Profile]Daniel Kahneman プリンストン大学名誉教授。ノーベル経済学賞受賞。
Olivier Sibony マッキンゼーを経て、フランスHEC経営大学院教授。
Cass R. Sunstein ハーバード大学教授。専門は憲法、法哲学、行動経済学。

複雑な現代社会では、専門知識や資格を持つプロフェッショナルに高度な判断を依存する。問題は、裁判の量刑や病気の診断、保険金額の査定など様々な専門領域において、専門家の判断にはなはだしいばらつきが存在することだ。

行動経済学の創始者の一人、カーネマンは『ファスト&スロー』で、直感的思考には多くのバイアス(偏り)が存在し、意思決定が歪められていることを論じた。ノイズ(ばらつき)も人の直感がもたらすエラーで、バイアス以上に弊害が大きい。人事評価や採用、経営を考えるうえで役立つ著作が早々に翻訳された。

裁判官には、いつも甘めな人と厳しめな人が存在し、同様の案件でも量刑がばらつく。さらに同一裁判官でのばらつきも大きく、いつもは寛容でも常習犯にはほかの裁判官より厳しくなる人や、同様の事案でも昼食前(!)は量刑が厳しめとなる裁判官もいる。

小さなノイズを針小棒大に語っているだけではないのか。損害保険会社で2人の専門家が同じ案件を見積もった。経営者は事前に10%程度のばらつきを想定していたが、乖離は何と55%もあった。甘受しがたい大きなばらつきだ。

ノイズは、認知能力の欠如からではなく、そもそもわれわれが知り得ないことが多いために生ずる。本来なら統計的な調査が必要だが、人間の直感には統計的思考が欠ける。一方で人間は目の前にある情報を基に、もっともらしい因果的説明を作り上げるのが得意で、自らもそれに納得する。

どうすればノイズを除去できるか。そもそも組織内に大きなノイズがあることを皆、認めたがらないため、解消のハードルは高い。そのうえで、判断の項目をいくつかの要素に分解し、それぞれ独立して検討することが必要という。最初の項目への評価が、関係のないはずの次の項目の評価にも影響を与えがちだ。

文殊の知恵も有効で、多くの人が個別に判断した結果を集約すると、ノイズを抑制できる。ただ、一堂に会して議論するのは誤りで、最初の発言者の意見に影響され、ノイズが増幅される。また、直感を使うにしても最終段階とすべきで、その前にできる限り正確な情報を多く集めることが肝要だ。抵抗は多いが、アルゴリズムなどルールの活用はノイズ除去に役立つ。

人は世界を理解するために物語を必要とする生き物だ。なるほど経営者が語る大きな物語の共有も社員の共感を獲得し、時として有効だろう。ただ、統計的思考の欠如した情熱だけの経営判断は危うい。

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