自分の能力を過信している人(実際の能力は人並みである)、ある人種はほかの人種よりも仕事ができないという偏見を持つ人(実際は、仕事の能力と人種に相関はない)、株価がある特定の経済変数によって決まると誤認している投資家(実際には、株価は無数の経済変数の影響を受けている)など、私たちの周りには、自身の置かれた環境を誤認している、すなわち「バイアス」を持つ人が多数存在する。
にもかかわらず、伝統的な経済学では、このようなバイアスを持つ人の行動分析は扱われてこなかった。「バイアスは短期的な現象で、長期的には淘汰されてゆくはずだ」と考えられていたからだ。
例えば、自分が他人より優れていると誤認している会社員がいたとしよう。本人は「自分の能力をもってすればトントン拍子で出世できるに違いない」と考えるわけだが、現実は違う。であれば、「思うように出世できないのは、実は自分の能力が低いからではないか」と気づくはずだ、というのが伝統的経済学の考え方である。
この記事は会員限定です。登録すると続きをお読み頂けます。
ログイン(会員の方はこちら)
無料会員登録
登録は簡単3ステップ
東洋経済のオリジナル記事1,000本以上が読み放題
おすすめ情報をメルマガでお届け
トピックボードAD
有料会員限定記事
無料会員登録はこちら
ログインはこちら