脱炭素の移行期に化石燃料の争奪戦が勃発した。その余波はサプライチェーン混乱から世界経済の後退懸念、原発待望論まで広がる。資源小国・日本の生き残る道は。
パーフェクトストーム。市場関係者は、この秋から深刻化している世界的なエネルギー需給逼迫の状況を、多重的な災厄の襲来に例えてこう呼ぶ。
9~10月にかけ、天然ガス価格は史上最高値を連日更新した。欧州の天然ガスとアジアのLNG(液化天然ガス)のスポット価格は一時、100万BTU(英国熱量単位)当たり30ドル台半ばまで急騰。これは原油に換算すると1バレル=200ドルを超える水準だ。同期間に1バレル=70~80ドル台だった原油価格と比べると、ガス価格の異常な急騰ぶりがわかるだろう。
各地で停電、工場停止も
今回のエネルギー需給逼迫は複合要因によるものだ。コロナ禍からの経済活動再開で電力需要が急速に増加。一方、再生可能エネルギー導入に大きく舵を切った欧州では、風況が例年より悪く風力発電の出力が低下した。そこにロシアからの天然ガスの供給制約や、南米や中国などからの世界的なLNG需要の増加が重なった。発電用の石炭価格も最高値を更新し、世界各国で同時多発的に電力卸価格の上昇や停電を引き起こした。
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