世界最大級のデリバティブ市場を運営する米CME(シカゴ・マーカンタイル取引所)グループのエリック・ノーランド氏は、エネルギー価格高騰が世界経済に与える影響をこうみる。
影響が大きいのは、日本を含めたエネルギー輸入国だ。アジアでは韓国も含まれる。中国は石炭の大産出国だが、石油や天然ガスなどの輸入が多く、影響はやはり大きい。インドはとくに石炭価格上昇による打撃が厳しい。
英国やアイルランドなどは天然ガスの供給不足で電気代が高騰している。欧州での例外は、電力の約4分の3を原子力で賄うフランスや、天然ガスの輸出国であるノルウェーなど数少ない。
米国は石炭の自給国で、天然ガスも自給し、輸出もしている。北米の天然ガス価格は欧州やアジアの7分の1程度であまり上がっていない。豪州やロシア、カタール、アルジェリアを含めた少数のガス輸出国が恩恵を受けている。
資源高は円安ドル高の一因ともなっている。日本では電力の7割以上が化石燃料で賄われており、負担増の影響は大きい。新たな「税金」を課しているようなものだ。短期的に日本経済を下押しし、通貨安の原因となっている。
しかし、エネルギーコストの上昇はいつまでも続くものではない。エネルギーの取引市場を見ると、(先物価格を限月順に並べた)フォワードカーブは来年以降の原油価格の反落予想を示している。天然ガスや石炭の価格も同様だ。
石油・ガス価格の上昇で米シェール企業の採算性は好転しており、来年は掘削ブームで大幅増産が起こるだろう。価格上昇後しばらく様子見をして増産投資を始めるため、供給が増えるまでに1年近いタイムラグがある。
OPEC(石油輸出国機構)プラスについては政治的な決定となるため見通しは難しいが、昨年の価格暴落を教訓に生産面の規律を重視している。ただ2〜3年の協調減産の後に増産を始めることが多い。規律は永遠には続かない。
巨額の企業債務を抱えた中国の景気が不動産問題などで減速を続ければ、やはりコモディティー(一次産品)価格の下方圧力となる。
脱炭素で価格変動高まる
世界的な脱炭素により、化石燃料と代替エネルギーとの競合は強まっていく。化石燃料の価格が高騰すれば、再生可能エネルギーや蓄電池素材などへの投資が拡大する。そうした競合の中で資源の価格変動性が高まるだろう。
米国では足元のインフレは歴史的な高水準だが、米国債市場を見ると長期の期待インフレ率は2.6%程度だ。インフレの主因は供給網の混乱だが、最悪期を過ぎたとみられる。バルチック海運指数は10月の高値から約50%反落した。市場も金融当局も、インフレと資源高は一過性との見方だ。
ただリスクはある。米消費者は膨大な貯蓄を保有しており、物価がもっと上がる前に消費を増やすかもしれない。結果、インフレがスパイラル的に高進する可能性がある。また、米国ではコロナ禍で約300万人が労働市場から去ったため、実質はすでに完全雇用に近い。企業は労働者を確保しにくく、賃金上昇圧力が生じている。スタグフレーション(インフレと景気低迷の同時進行)のリスクは小さい。リスクは景気の低迷よりむしろ過熱だ。
(構成 中村 稔)






















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