現実主義に徹して政権を手にしたが、総選挙を前に岸田ビジョンの中身は十分ではない。
岸田文雄内閣が10月4日に発足した。新首相として最初の判断は「最短の総選挙」の選択だった。21日の衆議院議員任期満了日を挟んで、14日に衆議院解散、31日に総選挙と宣言した。
岸田首相は自民党内で第5位の派閥・宏池会(岸田派)の長だ。9月29日の自民党総裁選では安倍晋三元首相、麻生太郎現副総裁、甘利明現幹事長の「3A」の後ろ盾が勝利の決め手となった。安倍氏は岸田選出の「キングメーカー」といわれたが、新体制の人事では、麻生氏が甘利氏との2A連携で筋書きどおりの布陣を実現し、「政権の黒幕」を印象づけた。
人事に不満の安倍氏と政権への影響力を確保した麻生氏の不協和音が目立ち始める。一方で、岸田氏にとどめを刺された形で退場した菅義偉前首相や二階俊博前幹事長との確執も尾を引きそうだ。
総選挙制勝には「挙党・オールスター内閣」が最善という声も強かったが、岸田首相は、挙党態勢ではなく、新主流派傾斜内閣で出発した。「老壮青の起用・若手抜擢」と称しながら、初入閣が13人、うち6人が65歳以上という陣容である。「論功行賞・滞貨一掃人事」「2Aの傀儡(かいらい)政権」「派閥復活」と悪評が噴出する。発足直後の内閣支持率は、朝日新聞の10月4〜5日調査で過去20年の歴代内閣で最低の45%だった。
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