「物価の安定」に絞られた目的規定。だが、日銀を取り巻く状況は法改正時とは一変した。
多くの法律には目的規定がある。
「〜に鑑み〜を推進し、もって〜に資することを目的とする」
参議院法制局の調べによると、2017年からの3年間で成立した54の法律(改正法を除く)のうち、39の法律に目的規定が置かれていた。何のために特定の国家意思を定めるのかという説明でもあるし、新しい組織や仕組みの必要性を示す役割も担う。
最近、その目的規定や組織運営の理念をめぐって議論が起きた法律がある。日本銀行法だ。
発端は今年6月の金融政策決定会合。「金融機関の気候変動対応融資を支援する新たな資金供給策」の導入を決定したが、「時代に合致した措置」とする賛成意見に対して、「日銀の目的から外れる」との懐疑的な見方も少なくなかった。「温暖化対策は喫緊の課題だが、中央銀行が乗り出すべき政策なのか、効果と副作用はどの程度あるのか、見極めなければならない」(朝日新聞社説)などという主張だ。
「長い目で見ればマクロ経済の安定に資する」──。黒田東彦・日銀総裁は記者会見などでそう説明するが、「風吹けば桶屋」的で説得力不足だとの指摘も多い。
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