昨年来、たいへんな渋沢栄一ブームで、『論語と算盤(そろばん)』の解説本が何冊も出版されている。NHK大河ドラマや新1万円札の影響もあるだろうが、より本質的なところで、グローバル化と多様化が同時に進行する現代に栄一の思想がマッチしているのだろう。
「会社の目的は株主価値の最大化にある」という株主資本主義が行き詰まりを見せていることはもはや明らかであり、地球という狭い空間の中で、人々がネットワーク化された21世紀の世界においては、必然的に自分以外のステークホルダー(利害関係者)との関係性や多様性を意識せざるをえない状況にある。
そのときに必要になってくるのが、「こうあるべき」という「強い規範」ではなく、相手を思いやることから生まれてくる「弱い規範」としての「共感」である。国連のSDGsは、世界を持続可能性のあるものにするために必要な17項目だが、それ自体には何ら強制力はない。それらを実現するために自分に何ができるのか、各人がよく考えてみようという提案であり、その前提には、われわれは皆、「地球」という狭くとても脆弱な、同じ船に乗っているのだという共通の理解がある。
この記事は有料会員限定です
残り 496文字
