書き手の存在を懸けた衝迫力 堅気の人の本は外した
──選んだ基準は?
いわゆる名作を選びたかったわけではない。ノンフィクションの評価基準が、文章のうまさやテクニックに流れている気がする。作品としてのうまさはもちろん大事だが、技術的なうまさばかりを追求したノンフィクションは、一方で、タブーを避けようとする。問題の所在にピントを合わせるのではなく、読み手にとって心地よいかどうかに重きが置かれてしまう。
私が重んじたのは書き手の気迫。どうしてもこれを調べて書きたい、タブーといわれている領域であっても、これは書かずにはおれない……。そんな書き手の存在を懸けた衝迫力。そこに着目した。だから選んだ作品はどれも徹底したローアングルで、危険な領域、タブーに挑戦している。
その代表が、サラ金の武富士に迫った三宅勝久の『武富士追及』であり、武富士を批判したために盗聴までされた山岡俊介の『銀バエ』だ。タイトルは、捜査官が発した「(フリージャーナリストの)お前らは銀バエだ」という侮言から。「銀バエで上等」という山岡の意地であり誇りであろう。作品としてのうまさを基準にしたらこの2冊は入らないだろうが、いずれも「訴えずにおくものか」という気迫が伝わってくる“熱書”だ。
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