安手な希望を求める現代 そこに爆弾を投げ込んだ 評論家 佐高 信氏に聞く

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さたか・まこと 1945年生まれ。慶応大学法学部卒業。高校教師や経済誌『現代ビジョン』編集長を経て評論家に。近著に『いま、なぜ魯迅か』『池田大作と宮本顕治』『総理大臣菅義偉の大罪』『竹中平蔵への退場勧告』など。『佐藤優というタブー』では名誉毀損で訴えられている。(撮影:今井康一)
時代を撃つノンフィクション100 (岩波新書 新赤版 1873)
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何に着目をして、どんな視点から調べるか。そこに書き手の「人生」が表れるのがノンフィクションだ。一方、何を読み継いでいくべきかという視点で作品を選ぶ場合、選書にその人間の生き方が表れる。批判精神を絶やさない評論家が100冊のノンフィクションを選んだ。

書き手の存在を懸けた衝迫力 堅気の人の本は外した

──選んだ基準は?

いわゆる名作を選びたかったわけではない。ノンフィクションの評価基準が、文章のうまさやテクニックに流れている気がする。作品としてのうまさはもちろん大事だが、技術的なうまさばかりを追求したノンフィクションは、一方で、タブーを避けようとする。問題の所在にピントを合わせるのではなく、読み手にとって心地よいかどうかに重きが置かれてしまう。

私が重んじたのは書き手の気迫。どうしてもこれを調べて書きたい、タブーといわれている領域であっても、これは書かずにはおれない……。そんな書き手の存在を懸けた衝迫力。そこに着目した。だから選んだ作品はどれも徹底したローアングルで、危険な領域、タブーに挑戦している。

その代表が、サラ金の武富士に迫った三宅勝久の『武富士追及』であり、武富士を批判したために盗聴までされた山岡俊介の『銀バエ』だ。タイトルは、捜査官が発した「(フリージャーナリストの)お前らは銀バエだ」という侮言から。「銀バエで上等」という山岡の意地であり誇りであろう。作品としてのうまさを基準にしたらこの2冊は入らないだろうが、いずれも「訴えずにおくものか」という気迫が伝わってくる“熱書”だ。

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