ビデオレンタル大手で勃発した経営陣の内紛。創業家御曹司の攻勢に防戦一方の会長は乾坤一擲(けんこんいってき)の策に懸けた。が、たくらみは失敗。しかも虎の子の株式は闇に消えてしまう。
2011年12月、ゲオホールディングスの沢田喜代則会長は「喫茶室ルノアール」など品川駅近くで男たちと交渉を重ねていた。
相手は「ティービーエス調査センター」(TBS)なる有限会社の関係者を名乗っていた。代表と取締役はいずれも60代。54歳の沢田氏に比べ一回り上だ。肩書はよくわからないが、もう1人は40代半ばだった。沢田氏がTBS関係者との接触を始めたのは4カ月ほど前のこと。最初はゲオの顧問を務めていた経営コンサルタントと大阪在住の税理士を通じてだった。目的はMBO(経営陣による買収)資金の調達である。
その年7月、ゲオでは内紛が起きていた。7年前に急死した創業者・遠藤結城氏の長男でまだ33歳と役員最年少だった結蔵氏が反旗を翻し、株主提案により取締役会の多数派を握ろうと動き始めたのだ。結城氏の死後、経営トップの座を引き継いだ沢田氏は防戦を強いられた。何しろ結蔵氏は資産管理会社「城蔵屋」なども含め約3割の株を押さえていたからだ。
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