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暴かれた架空循環取引 IT急成長の陰で蔓延した悪事

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企業統治がいかに強化されても、会社を舞台にした不祥事やお家騒動が後を絶つことはない。その根源を追う連載の第1回は、昨年初めに広く明るみに出たIT業界の架空循環取引だ。

ネットワンシステムズが外部弁護士らに調査依頼し、昨年3月に公表した調査報告書。架空循環取引の実態が描かれている

ネットワンシステムズの東日本第1事業本部第1営業部第1チームに所属するシニアマネジャーからそのメールが届いたのは2019年7月17日午後4時11分のことだ。受信したのは日本製鉄の孫会社に当たるテックスエンジソリューションズ(TEXSOL)の社員。兄弟関係にある日鉄ソリューションズ(NSSOL)の仲立ちでネットワン社員とは前年1月にもメールのやり取りをしたことがあった。

「物販案件について」

そんな味気ない件名の下、全部で20行の本文はこんな書き出しで取引への参加を勧誘していた。

「掲題の件ですが、下記内容にて案件を進めたく考えております。/商流/ネクスト社→貴社→富士電機ITソリューション(FSL)」

15分後、TEXSOL社員は早々と取引を受託する旨の返信メールを送っている。

「事前にお聞きしております内容と差異がありませんので、是非ともお願いできればと思います」

総額5億円近くに上る大型取引だが、これでほぼ成約したも同然だった。ネットワン社員が仕入れ先に指定していたネクストは数十人規模の中小企業で、これまで取引実績のない見ず知らずの相手。販売先のFSLは大手の富士電機の傘下だが、やはり同様だった。

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