不正会計は大半が行き詰まる。そんな腐臭を嗅ぎ取り近寄ってくるのが海千山千の金融ブローカーらだ。富士バイオメディックス事件はまさにそうした事例に当たる。
今年1月15日、ある詐欺事件の判決が東京高裁で言い渡された。実刑7年の地裁判決を不服とし控訴していたのは元税理士の吉富太可士被告。一審では自らの行為を正当化しようと多弁に振る舞っていたが、裁判官に受け入れられることはなかった。この日の二審判決も同様。控訴は棄却。現在、上告中だ。
吉富元税理士が罪に問われているのは医療法人「徳友会」を舞台とする不正リース事件である。2012年5月、「田内貴士」なる偽名工作の末に吉富元税理士が影響下に置いた徳友会は、総額10億円の医療機器リース契約を結んだ。が、その際、リース会社に提出した購入時の見積書は、キヤノンマーケティングジャパンの社員らと共謀し、金額を水増ししたもの。実際の購入額との差額約6億円は別の医療法人の買収などに流用された。14年5月に徳友会は破産。逮捕劇は18年7月のことだった。
実は犯行があった当時、吉富元税理士は上場企業をめぐる粉飾決算事件で有罪判決を受け、執行猶予中の身だった。11年5月に摘発された富士バイオメディックスの粉飾事件がそれだ。この事件で注目されたのは外部の協力者が経営陣に対し粉飾の手口を指南していた点である。当時、捜査当局は吉富元税理士らを暗に指し「粉飾アレンジャー」と呼んでいた。
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