水平分業の拡大で受託製造の覇者・TSMCの躍進が止まらない。
世界的に車載向け半導体の不足が顕著になった1月下旬。台湾政府経済部の複数の高官たちは必死に電話をかけていた。「増産や生産順序の変更は本当にできないのか」。相手は半導体受託製造(ファウンドリー)でシェアの約半分を占める台湾積体電路製造(TSMC)をはじめとする台湾の半導体企業の幹部らだ。
その直前、自動車が一大産業の日本、米国、ドイツの各国政府は半導体メーカーへ増産を促すよう台湾政府に協力を求めていた。国交がない各国からの異例の要請に台湾当局内の熱気は高まっていた。王美花・経済部長(大臣)は直接TSMC幹部と会談まで行った。
「自動車産業への影響を軽減することが当社の優先事項だ」。1月28日、TSMCは要請を受けそう声明を発表した。ただ、具体的な生産前倒しなどの予定は示されなかった。「実質ゼロ回答だよ」と台湾政府経済部の高官はため息をつく。台湾でTSMCに次ぐファウンドリー大手の聯華電子(UMC)の王石・総経理は、よりはっきりとこう語った。「車載向けを優先するのは無理だ。注文を受けた順番を崩すわけにはいかない」。
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