歴史の大きな流れで見れば私たちは幸運だ。飢饉や飢餓は大幅に減り、生活水準は全体的に上がった。とはいえ、このようなすばらしい発展と同時に、人類は破滅的な脅威を抱え込むようになった。今回のコロナ禍で、私たちはこのことを思い知ったはずだ。にもかかわらず、さまざまな巨大リスクに対して、私たちはまだ本気で向き合おうとしていない。
過去200年にわたる人類の進歩は産業化によるものだが、そこには負の側面も付きまとった。欲に駆られた企業と統治者は利益を最大化しようと経費を絞り、その結果、大規模な貧困や失業がたびたび引き起こされてきた。鉱山・工場労働者が容赦なく搾取されていた時代がある。産業化の勃興が奴隷的な労働や天然資源の争奪に拍車をかけ、これが幾度もの大戦や過酷な植民地支配につながった。
このような圧倒的な弊害は特異な現象ではないが、かといって起こるべくして起こったものでもない。その証拠に、問題の多くは市場メカニズムや労使関係の改革、国家規制、新たな(そして多くの場合は民主的な)制度を通じて是正されてきた。そうはいっても、まだ数々の問題が手つかずとなっている。産業化に伴う地球規模のリスクの中でも、とくに差し迫った脅威となっているのが気候変動だ。経済発展が人類の存続を危うくした典型例といえよう。
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