昨年末、「毎月勤労統計調査」の集計方法に不備が発覚して以来、経済統計の正確性が話題になった。一方で、日本の統計職員数が2006年からの10年間で約5600人から約1900人へと急減していることや、米英仏などの主要先進国と比較して実数・人口比の両面で非常に少ないことも広く知られるようになった。本稿では、少ないリソースで統計の質を確保する方策について考えてみたい。
「毎月勤労統計調査」を例に取ると、集計方法で問題となったのは次の2点だ。①全数調査とすべき東京都の大規模事業所をおおむね3分の1の抽出調査に切り替えていた、②その際に標本から全体を推定する「割り戻し」が行われていなかった。
多くの政府統計では、集計値への影響が大きいため大規模事業所を全数調査とするのが通例だ。すなわち、全数調査をしなければ統計の設計段階で算出される標準誤差(誤差の典型的なサイズ)への影響が大きくなる。また、たとえその誤差率が設計の範囲内であったとしても、前期比などを見る場合に同じ事業所が毎回回答する区分があったほうが、より情報の精度が高いということになる。割り戻しを行うのは、全体での合計値や平均を正確に推定するためだ。
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