「トヨタ自動車はアライアンスの下手な会社だ」と、豊田章男は公言してはばからない。現に、いすゞ自動車や米テスラとの提携に失敗している。
しかし、環境激変の下で、「カーメーカー」から「モビリティカンパニー」に進化しようとすれば、単独対応では限界がある。他社との提携なしに、それは実現できない。それどころか、生き残れない。思い切ってアライアンス、仲間づくりを図らなければならない。
トヨタがアライアンス下手なら、トヨタ自身が変わればいいではないか。それなら、トップが率先して動くだけだ。章男は、現副社長で技術畑を預かる寺師茂樹にこう語った。
「将来を見据えて、もっとオープンにアライアンスがやれるように考えようじゃないか」
2014年から15年にかけての話である。
トヨタのアライアンスは、支配や規模の拡大を目的としない。志を同じくする者同士の連帯関係に近い。その端的なケースが、マツダである。
「小飼さん、ここにマツダのクルマがないんです」
章男が現マツダ会長の小飼雅道と初めて1対1で会ったのは、小飼がマツダ社長に就任して約半年、13年末のことである。小飼は、豊田市にあるトヨタ本社を訪れた。
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