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『蛮行のヨーロッパ 第二次世界大戦直後の暴力』 『景気の回復が感じられないのはなぜか 長期停滞論争』ほか

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蛮行のヨーロッパ:第二次世界大戦直後の暴力
蛮行のヨーロッパ:第二次世界大戦直後の暴力(キース・ロウ 著/猪狩弘美、望 龍彦 訳/白水社/7400円+税/601ページ)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。
Kieth Lowe●1970年生まれ。マンチェスター大学で英文学を学び、歴史関連書の出版に携わった後、作家および歴史家として著作を発表。本書で、英国で優れた歴史ノンフィクションに贈られるヘッセル・ティルトマン賞を受賞。小説の作品には『トンネル・ヴィジョン』がある。

知られざる欧州の戦後、ほぼ5年“戦中”だった

評者 法政大学名誉教授 川成 洋

前世紀の2度の大戦を欧州では、合わせて「欧州30年戦争」と呼ぶ。第1次大戦後、英、仏による宿敵ドイツと社会主義国家ソ連の封じ込めを主眼とする戦後処理が第2次大戦を誘発する大きな要因の1つだったからである。

ヒトラーの死をもって欧州での第2次大戦は終結したが、終戦とともに欧州は復活の道を歩み始めたのだろうか。それともドイツ古典派詩人シラーが嘆息したように「戦争は戦争を養」ったのだろうか。

本書は、終戦直後から1940年代末までの5年間、欧州全域に吹き荒れた復讐の情念が引き起こした途方もない残虐行為を、被害者から子孫への口伝も用いながら、実証的に詳らかにしている。厚さ故か、価格故か、大メディアに書評がないが、間違いなく必読の名著である。

ドイツの戦争捕虜は1100万人を超え、さらにドイツ軍の占領地にはほぼ同数のドイツ人が居住していた。彼らはナチ時代の加害行為の実行者として憎悪の的となり、本国に送還される権利は認められず、暴力的に国外追放となった。ドイツの版図も、領土不拡大や民族自決をうたった41年8月の大西洋憲章とは裏腹に、大幅に縮小された。

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