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『狼の義 新犬養木堂伝』『PRINCIPLES 人生と仕事の原則』 『言葉の国イランと私 世界一お喋り上手な人たち』ほか

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狼の義 新 犬養木堂伝
狼の義 新 犬養木堂伝(林 新、堀川惠子 著/角川書店/1900円+税/477ページ)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。
はやし・あらた●1957年生まれ。慶応大学卒業。NHKの番組制作者として近現代史を扱う。退職後、わかりやすさを優先し本書を小説形式で執筆、ほぼ半分を書き2017年死去。
ほりかわ・けいこ●1969年生まれ。ノンフィクション作家。著書に『死刑の基準』『裁かれた命』『原爆供養塔』など。配偶者である林との約束で本書の執筆を引き継ぐ。

多彩な同時代人配し描く、立憲の理想を追った宰相

評者 ノンフィクション作家 保阪正康

本書は犬養毅(1855〜1932年)の青年期から、軍縮に反対する軍人によるテロ(5.15事件)に倒れるまでの歩みを軸に、政治家、言論人の古島一雄を伴走者にして近代日本の政治の表裏を描いた人間ドラマである。

読み進むうちに、 小説的手法による心理描写や会話をとおして、登場人物たちが生き生きと浮かび上がってくる点が興味深い。もっとも、ノンフィクション作品ではないので、人物描写は「著者の目で見ると」となっている。

郵便報知新聞の従軍記者として、西南戦争を取材した21歳の青年学徒に西郷隆盛のイメージは強烈に残る。犬養の人生は、こうした歴史上の事件、事象に出合うことで膨らみを持っていく。

文中ではさりげなく同時代人の断面が語られる。西南戦争取材の折に、昭和の軍閥の代表ともいうべき東條英機の父英教が顔を出すといった具合だ。また、大隈重信や陸羯南(くがかつなん)、三浦梧楼など多数の要人が歴史の証言者として顔を出し、読者を飽きさせない。

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