書物、人物を通じて、現代を切り取るコラム集
評者 福井県立大学名誉教授 中沢孝夫
「ものをつくり、ものを用ゐるのはすべて人間なのである。原子力時代と呼ばれるやうな時代に生きて、原子力を用ゐる能力が、これに平行してゐるかどうかは、今日のところ、どうも疑問である」
哲学者、田中美知太郎が1952年に書いた文章を紹介し、さらに原子力開発草創期の技術者の言葉から、技術を用いる時の緊張感が時とともに失われると指摘。そして、同様に緊張感のない政界に、被災地に近い仙台での国会を開くことを提案する(「初心忘れた原子力」2011年6月11日)。鮮やかである。
本書は、70歳を過ぎてなお読売新聞で政治記者として活躍する著者が書いたコラムと書評を編んだものだが、出会った政治家や、書物、人物を通して、さりげない言葉によって現代を描いている。
後藤新平、大平正芳、中曽根康弘元首相らが繰り返し登場するが、彼らの言葉は本質的であり鋭利で深い思惟を感じさせる。例えば大平は「権力はそれが奉仕する目的に必要な限り、その存在が許される」と記した、とあるが、確かに権力とはそうあるべきだ。
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