いとう・もとしげ●1951年生まれ。東京大学経済学部卒業後、東大大学院教授、NIRA理事長などを経て現在、学習院大学国際社会科学部教授。専門は国際経済学、ミクロ経済学。現場を歩き、理論的観点も踏まえた経済分析に定評。著書多数。オーラルヒストリー収集にも熱心。
変化への対応が得意? ネットとも実は相性いい
評者 兵庫県立大学大学院客員教授 中沢孝夫
売る側の多様化と消費者の情報収集方法の変化で、小売業は転換期にある。本書は、小売業の中でも百貨店の抱える問題点と可能性について、足で情報を集め、データを点検して論じている。
百貨店の売上高は、1991年の9兆7131億円をピークに、2016年には6兆円弱まで縮小した。小売業全体の売上高は横ばいなので、百貨店の独り負けという状況だ。確かにユニクロやアマゾンの成長は驚異的だ。ただ、見方を変えると百貨店は健闘していると著者は言う。
ダイエーは創業15年で小売業の売上高で日本一になったが、それから30年余で破綻した。一方、百貨店の中には江戸時代に呉服屋として創業した老舗がいくつもある。
売上高が4割近く減少しても百貨店が生き残っているのは、結果的に変化への対応力があるということだ。さらに、魅力的な商品の調達力、売り場を編集する力、あるいは消費者の百貨店への信頼など、ブランドを作る能力が卓越しているからなのだろう。
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