「旅」の果てに 意外だが納得の結論
評者 BNPパリバ証券経済調査本部長 河野龍太郎
一般に資本主義は、市場システムと生産手段の私有制との組み合わせと定義される。平成が始まった頃、共産圏の瓦解を前にして、資本主義こそが唯一の経済システムなんだと多くの人が考えた。
しかし、繰り返される金融バブルや膨大な浪費、経済格差、金権政治などを前に、欧米では懐疑的な人も増えている。本書は、ドイツの経済学者が代替可能な経済システムを丁寧に探ったものだ。
経済の寡頭支配などの問題は、政治との癒着の中で生じる。それゆえ、まず哲人政治の下で公正な商業資本主義を模索したプラトンの共和制を振り返る。ただ、現実には、哲人の間ですら正義について合意するのは容易ではない。
次に共有財産制を目指したトマス・モアのユートピア論やクロポトキンの無政府主義を検証するが、市場システムなしには複雑な経済の資源配分は困難で、機能しない。そこで、旧ユーゴスラビアで採用された自己管理型の市場経済に目を転ずるが、株式市場による経営者への規律付けが働かず、縁故主義に陥る。
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