Michel Floquet●1958年生まれ。リール大学院ジャーナリズム専攻修了。TF1(テレビ・フランス1)で1981年からレバノン内戦、ルワンダの虐殺、ソマリア内戦、ユーゴ紛争など多くの紛争を取材。ニュース番組の編集責任者、ワシントン特派員を経て、報道部副部長。
理想と現実の悲しい乖離 愛憎併存の米国批判
評者 東京外国語大学大学院教授 渡邊啓貴
フランスではトクヴィルの『アメリカのデモクラシー』以来、米国関連本が連綿と刊行され、その多くが批判的な内容である。
しかし、フランス人の米国批判は両国の歴史的しがらみもあって一筋縄ではいかない。実は両国民には引かれ合うところが多く、フランス人ジャーナリストの著者が指摘するようにフランス人の対米感情は「愛憎併存」という状況にある。本書も批判的だが、それは単なる悪感情ではなく、著者の米国への思い入れや期待の大きさゆえの失望感に起因しているのだろう。
本書の特徴は、さまざまな領域の矛盾やひずみが社会の中に構造化されていることを豊富な事例とともに説き、矛盾やひずみの相互連関性を明らかにしている点だ。
米国の理想はデモクラシーの手本となることだ。ところが、発言・行動の自由は、偏った宗教的世界観によって制約される。裁判所では自分の信念を優先する公務員が同性愛、避妊、中絶などをあっさりと拒絶する。
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