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『贈与と共生の経済倫理学』 『最後の頭取 北海道拓殖銀行破綻20年後の真実』ほか

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贈与と共生の経済倫理学――ポランニーで読み解く金子美登の実践と「お礼制」
贈与と共生の経済倫理学――ポランニーで読み解く金子美登の実践と「お礼制」(折戸えとな 著/ヘウレーカ/3800円+税/395ページ)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。
おりと・えとな●1975年生まれ。2001年津田塾大学学芸学部卒業。03年から1年弱、霜里農場で有機農業研修後、群馬県で新規就農。諸般の事情で断念、17年東京大学大学院新領域創成科学研究科博士後期課程を修了、環境学博士。18年死去。本書は博士論文の構成を多少変えて刊行。

お礼が生む豊かな関係 経済倫理の新たな可能性

評者 北海道大学大学院教授 橋本 努

日本の有機農業と消費者をつなぐ「提携」運動に密着し、この運動の独自性を深部から掘り起こした珠玉の書だ。まず著者の感受性に心を打たれる。実践に裏付けられた粘り強い思索は、日本発の新たな経済思想の誕生と言ってもいいだろう。

1960年代の後半、水俣病などの環境汚染への反省から、心ある消費者たちは農家との「顔の見える関係」を築くべく、新しい流通様式を探った。さまざまな試みがなされるなかで、著者は埼玉県比企郡小川町の霜里農場の「お礼制」に注目する。

同農場では、最初は会費制で生産者と消費者を直結したもののうまくいかなかった。ところが「お礼制」を導入すると、うまく回り始める。なによりも、農場主の心が安らいだ。「農民として人間的に解放された」ようだという。

お礼制とは、生産者が農産物を消費者に贈与し、消費者はめいめいがお礼の金額を考えて渡す仕組み。直売所やスーパーなど他の流通経路も並存していたようだが、お礼制によって市場原理から解放された当事者たちは心の余裕を手にし、自由に生きることができた。お金に換算できない豊かな人間関係が生まれた。

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