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『時間の経済学 自由・正義・歴史の復讐』 『潜入・最低賃金労働の現場』ほか

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時間の経済学:自由・正義・歴史の復讐 (叢書・知を究める 14)
時間の経済学:自由・正義・歴史の復讐 (叢書・知を究める 14)(小林慶一郎 著/ミネルヴァ書房/2400円+税/299ページ)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。
こばやし・けいいちろう●1966年生まれ。91年東京大学大学院工学系研究科修了、通商産業省入省、98年経済学Ph.D.(シカゴ大)取得。専攻はマクロ経済学、経済成長論。現在慶応大学経済学部客員教授、キヤノングローバル戦略研究所研究主幹など。著書に『日本経済の罠』(共著)など。

人は神なき社会で自己犠牲をなしうるか

評者 BNPパリバ証券経済調査本部長 河野龍太郎

著者は、精力的な執筆活動で、財政健全化の必要性を粘り強く論じる経済学者だ。今回は財政健全化が進まない理由を政治思想の領域まで掘り下げた。ロールズやハイエク、ポーコックなどの思想を手がかりに、財政健全化を可能とする政治哲学を模索する。

自発的に誰かが犠牲になれば残り全員が助かるが、誰も自己犠牲を選択しなければ全員死ぬというタイプの問題を、ライフボートジレンマと定義する。かつては全体のための個の犠牲を可能にしたのが伝統社会や宗教の規律だった。リベラリズムを前提とする現代民主制では、個に犠牲を求めるのは容易ではない。

世代をまたぐ問題となると、一段と困難になる。財政再建が進まないのは、メリットを享受するのが将来世代で、現役世代は費用を負担するだけだからだ。われわれは利己的で、何世代も先の子孫への利他性は限られる。社会が一度合意しても、将来反故にされる可能性もあり、リベラリズムは世代間の問題に無力だが、根はさらに深い。

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