発売5カ月で販売部数16万部を超えるヒットを飛ばした哲学書が『「死」とは何か』である。
この本は、道徳哲学、規範倫理学の専門家として知られる米イェール大学のシェリー・ケーガン教授が、23年連続で行っている人気講義をまとめた1冊だ。本国米国ではさほど売れていなかったのだが、韓国で一足先に10万部を超えるヒットを記録したことから、日本でも発刊されるに至った。
死への根本的疑問を哲学的に考察する
内容は、題名のとおり「死」について考えるものだ。しかし、「自分の死を粛々と受け入れる」、あるいは「他人の死とどう向き合うか」といったもので、死に直面したときの精神論はいっさい語られない。「そもそも『死』とは何なのか?」との根本的な疑問について、ケーガン教授が自ら投げかけた問いを一つひとつ考察していく。
例えば、前半の問いは、「何をもって『死』とみなすか」。
一般的に、人間は身体の機能が停止したときに「死んだ」と見なされる。しかし、その機能とは、心臓や肺を動かしたり、食物を消化したりする身体機能(B機能)を指すのか。それとも物事を認知する機能(P機能)を指すのか。通常はB機能とP機能が同時に失われるが、異常な場合は、P機能だけ失われることがある(下図の※1の状態)。その場合、人間は生きているのか、死んでいるのか。もしP機能の喪失=死だとしたら、人間はいつからいつまで生きているのか──。このような疑問を丁寧に考察する。
この記事は有料会員限定です。
東洋経済オンライン有料会員にご登録いただくと、有料会員限定記事を含むすべての記事と、『週刊東洋経済』電子版をお読みいただけます。
- 有料会員限定記事を含むすべての記事が読める
- 『週刊東洋経済』電子版の最新号とバックナンバーが読み放題
- 有料会員限定メールマガジンをお届け
- 各種イベント・セミナーご優待
無料会員登録はこちら
ログインはこちら