有料会員限定

理性と本能の主権争い 勝つのはどっちか? アダム・スミスも動物の行動から考察

✎ 1 ✎ 2 ✎ 3 ✎ 4 ✎ 最新
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

有料会員限定記事の印刷ページの表示は、有料会員登録が必要です。

はこちら

はこちら

縮小
オマキザルにも損失回避の心理がある(Imaginechina/アフロ)

経済学は、人類の特筆すべき発明であり、取引や労働などさまざまな人間の行動を、合理的に説明する枠組みを与える。「人は効用最大化を目指し行動する」などの明確な前提を定め、それに基づき数学モデルをさまざまな問題に導入している。

だが、人間の行動には非合理なものも多く、それが伝統的経済学にさまざまな困難をもたらしてきた。これに対応するため、数学モデルを心理学的な観察事実で修正する、行動経済学(behavioral economics)が生じる。

ダン・アリエリーが著書名を『Predictably Irrational(予想どおりに不合理)』としたとおり、人の非合理的行動は、一定の予測が可能である。ノーベル経済学賞受賞の心理学者ダニエル・カーネマン以来、長年の研究で、その原因である「認知バイアス」の類型化も進んでいる。

強力な本能

認知バイアスの代表例である「サンクコスト・バイアス」を見よう。保有する株や不動産を売る際、投資理論は、「購入価格を忘れ、将来の騰落のみを考えろ」と教える。買値が100万円であろうと300万円であろうと、いま手元にある1枚の株券に違いはない。これを今、200万円で売るべきか否かは、過去の買値ではなく、将来価値が上がるか下がるかで判断すべきである。この例における買値のような支払済み費用を「サンクコスト(sunk cost)」と呼ぶ。

関連記事
トピックボードAD