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「運命の年」から30年、世界はどこに向かうのか ますます鮮明になる日本の地政学的脆弱性

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本連載は、主に時事問題をテーマに動物行動学や認知心理学などの観点から解説を加えていく。ただし新年の初回は例外とし、平成元年を振り返りたい。

1989年は立て続けに重要な事件が起きた特別な年であった。

  • 1月 昭和天皇崩御。平成に改元。ブッシュ第41代米大統領就任。
  • 2月 ソ連、アフガニスタンから撤退。江副浩正氏逮捕。米国防総省、初のGPS(全地球測位システム)衛星打ち上げ。イラン最高指導者のホメイニ師、サルマン・ラシュディ氏に死刑宣告。
  • 3月 欧州合同原子核研究所(CERN)でグローバル・ハイパーテキスト・プロジェクトの提案。インターネットの始まり。
  • 4月 消費税施行、税率3%。松下電器産業(現パナソニック)創業者の松下幸之助氏が死去。
  • 5月 ソ連のゴルバチョフ書記長、中国訪問。
  • 6月 ホメイニ師死去。天安門事件で中国人民解放軍が数万の民衆に無差別発砲。ポーランドで自由選挙、非労働党政党「連帯」が上院過半数。南アフリカのマンデラ氏、同国のボタ大統領と会談。
  • 7月 ビルマ(現ミャンマー)軍政府、アウンサンスーチー氏を軟禁。
  • 8月 ハンガリーで汎ヨーロッパピクニック。東ドイツからオーストリアを経由して西側へ亡命するルートに。
  • 9月 デクラーク氏、南アフリカ大統領に就任。横浜ベイブリッジ開通。
  • 10月 チベットのダライ・ラマ14世、ノーベル平和賞を受賞。ハンガリー、社会主義を改める。
  • 11月 オウム真理教による坂本堤弁護士一家殺害。ベルリンの壁崩壊。チェコスロバキア、ビロード革命で共産党政権崩壊。
  • 12月 ブッシュとゴルバチョフ、冷戦終結宣言(マルタ会談)。 ルーマニアでチャウシェスク政権崩壊。日経平均株価が最高値を記録。

89年を境に、民主主義と市場経済を核とする西欧の価値観が世界を統一する、との期待が生じた。

時勢に乗る米国の政治学者フランシス・フクヤマは、西欧の勝利宣言というべき論文「歴史の終わり?」を著す。「グローバリゼーション」の潮流の中、その後のBRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南ア)をはじめとする新興国への投資などが沸き立つ。

その要因はまず、ベルリンの壁崩壊に代表される冷戦構造の瓦解である。年末に米ソ首脳はマルタで冷戦終結を宣言する。東欧の社会主義は根拠を失い、2年後のソ連解体を招く。

人権運動も進展する。アパルトヘイトの国だった南アは自由選挙へと歩み出す。チベット自治の象徴ダライ・ラマ14世はノーベル平和賞を受賞した。

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