長期化した安倍政権で民主主義の柱が揺らぐ。だが対抗すべき野党はまだ協力体制を築けていない。
民主政治は世界中で大きな試練を迎えている。欧米の不安定な政情に比べて、日本では安倍晋三政権が7年目に入り、極めて安定しているように見える。しかし、表面的な政権の安定の陰で、民主政治の腐食は進んでいる。
2018年12月1日号の本欄で紹介した『民主主義の死に方』から再度引用したい。この本では民主主義を支える柱として、明文化された憲法規範とともに、書かれざる規範や慣習が重要だと指摘されている。具体的には、相互的寛容と組織的自制心が民主政治を安定させる暗黙の規範である。相互的寛容とは、政治的競争相手はライバルではあるが、政治体制を担う同伴者として敬意を払うということである。組織的自制心とは、明文上禁止されていないことでも、秩序の安定や法に対する敬意を引き出すために、党派的動機で動かしてはならないことについて手を触れるのを自制するということである。
この2つの柱が、安倍政権の長期化の中で揺らいでいる。組織的自制心の欠如は安倍政権の特徴である。この概念を英ジャーナリスト、ウォルター・バジョットの言葉を借りて言い換えれば、「尊厳的部分の権威を尊重する」ということであろう。尊厳的部分とは君主制だけではない。統治機能を担う公的機関の中にも尊厳的部分の要素が必要なものがある。通貨の信用を維持するためには中央銀行が独立性を保持しなければならない。日本では法秩序の安定のためには、内閣法制局が各種立法の憲法適合性について専門的見地から吟味することが必要とされてきた。
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