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AI万能論のわなにはまらない(6) 意味を伴うやり取りがAIにはできない

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要素を単に合成しただけでは意味を形成することができないということを、国立情報学研究所の新井紀子教授は強調する。それは、人間が抽象的な概念を言語化できることから明白である。この点についての新井氏の説明は説得力がある。

〈では、「太郎は花子が好きだ」はどんな画像にするのでしょう。「本当にそうでしょうか」は? さらに言えば、「『太郎は花子が好きだ』はどんな画像にするのだろう」という文は? 「そんなことは不可能だろう」という文は?/人間は身振り手振りや図では表現できないことこそを、言葉や文章で表現しています。この本に書かれていることは、画像にも動画にもできません。キーワードを拾ってもわかりません。速読もできません。読者の方にはお忙しいところ、大変なご苦労をかけて申し訳ありませんが、まさに一文一文読んで、意味を受け止め、今私がお伝えしたいことをご理解していただく以外に方法はありません。/「太郎は花子が好きだ」という文は、まさにそのとおりの意味で、何か他のものに還元することはできません。「花子は太郎に好かれている」と受け身に変換したり、「Taro loves Hanako」と英語に翻訳できたりしたからと言って、意味を理解していることにはなりません。人間ならば誰もがわかる「そのとおりの意味」をAIに教える道具は、少なくとも数学にはありません。そして、繰り返し申し上げているように、コンピューター上で動くソフトウエアに過ぎないAIは徹頭徹尾数学だけでできているのです〉(新井紀子『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』東洋経済新報社、2018年、137~138ページ)

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