新井紀子氏は、研究室に閉じこもっているタイプの学者ではない。学校での教育、企業での講演にも精力的に取り組んでいる。その経験に照らして、2年前と比較して企業のAI(人工知能)に対する見方が冷めてきていると指摘する。
〈日本の企業は非常に勉強熱心です。私は年間50回ほど企業や勉強会で講演をさせていただいています。2年前には、どの会場でも「シンギュラリティは来ますか?」という質問があるので辟易したものです。こんなにナイーブで日本の企業は大丈夫なのかと不安でした。けれども、この半年はそのような質問は減りました。一年間、必死で論文を読み漁り、データを集め、そして、さまざまなAI技術を試して、エラーを分析してきたのでしょう。そして、「モノづくり」企業として、あるいは信頼を売る企業として、この技術は取り入れられるのだろうかと自問自答を繰り返してこられたのだと思います。
先にも触れたとおり、グーグルやフェイスブックといった無償サービスで成長してきた企業にはAIに投資する明確な理由があります。セキュリティ攻撃、指数関数的に膨らんでいくユーザー間の関係の分析、SNSサービスによる誹誇中傷やフェイクニュースの広がりに対する厳しい視線、プライバシー保護や「忘れられる権利」への要求……。こうしたことに、人手を使わずに対応し続け、しかもユーザーを飽きさせずに新たな無償サービスを投入するには、AIを高度化せざるを得ません。
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