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傲慢という落とし穴 安倍政権を待ち構える

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ブレア英元首相(左)とブッシュ米元大統領(撮影は2007年6月7日)(AFP=時事)

英労働党の政治家、閣僚経験者で医師でもあったデイヴィッド・オーウェンは、後輩であるトニー・ブレア元英首相と米大統領のジョージ・ブッシュがイラク戦争を始めた政策決定を分析し、『The Hubris Syndrome(傲慢症候群)』という本を書いた。

権力は為政者を依存症に陥らせる薬物のようなもので、長年権力の座に居座ると傲慢こそが命取りになる。オーウェンが指摘するまでもなく、これは古代ギリシャ以来語り継がれた真理である。今、裁量労働制の撤回に、森友学園への国有地売却をめぐる公文書の改ざんという疑惑も浮上し、安倍晋三首相もこの病理に陥った感がある。

昨年夏、通常国会が森友疑惑で紛糾し、共謀罪の強行採決で閉幕した直後、安倍政権の支持率が急に下がり始めた状況の中で、当時の民進党の議員と議論したことを思い出す。彼は、「横綱相撲を取られていたら、野党は手も足も出なかっただろう」と述懐していた。

横綱相撲とは、野党からのまっとうな質問は正面から受け止め、間違いがあれば早期にそれを認めて謝罪し、是正すべきところがあれば改めるという姿勢である。自らも誤る可能性があることを前提とし、誤りには誠実に対処するという姿勢こそ、政治に対する信頼を作り出す。モリ・カケ問題について政府の側に一点の曇りもないというのは度の過ぎた強がりであり、自己正当化であった。安倍首相や政府与党の指導部は、森友疑惑の深刻さと国民の正義感の健全さを軽く見ていたと言うしかない。

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