過激なサイバー攻撃に出た北朝鮮の国内事情 北朝鮮のテロ示唆でソニー映画が公開中止

そのような“冒涜行為”の一例が、この数年、韓国の反北朝鮮団体が北朝鮮との軍事境界線付近で風船を飛ばして散布している宣伝ビラだ。これには、北朝鮮が何回も韓国政府にビラ散布の停止を求めている。
また、北朝鮮での深刻な人権侵害が国際法上の「人道に対する罪」に当たるとして、国際刑事裁判所への付託を求める決議が2014年12月18日に国連総会でなされた。これは、人道に対する罪の責任者を裁くためであり、この場合の責任者も金第1書記になる。これに対して北朝鮮は、国連本部を舞台にあらゆる手段を使って決議を否決させようと動いてきた。
一方で、「最高尊厳の冒涜に対する反発は、実は国内向けのもの」(韓国政府関係者)という指摘も根強い。それは、「北朝鮮の権力層内部での権力争いとして使われているだけ」(同)という理由からだ。たとえば、軍部内の新興勢力が自らの基盤固めとして「最高指導者をお守りする」という忠誠心を顕示するために、ことさらに主張しているという見方もできる。
忠誠心競争が過激な反発の原因
さらに、このような猛々しい主張は国際社会にそんな主張がどう伝わるかはほとんど考えられていないケースも多い。あくまでも国内の忠誠心競争の延長線上、ということだ。
だが、そんな内部競争のゆえに「テロ支援国家の再指定」という状況をに陥ると、北朝鮮としてはたいへん困ることになる。「人民生活の向上」を最優先に掲げる金第1書記にとって、対外的な経済活動は国を豊かにさせる唯一の方法だ。そして、経済開発区を設置するなど外国資本の誘致を急ぐ同国にとって、サイバー攻撃といった対外的犯罪への関与を疑われては、何もいいことはない。
北朝鮮は今回のオバマ大統領をはじめとする米国政府への指摘に大反発しながらも、「今回の事件について米国と共同調査もできる」と明らかにしている。米国が応じる可能性はほとんどないが、北朝鮮の本音としては「共同調査」などをきっかけに米国と対話をしたい、ということ。今後の米国の動きにしたがって北朝鮮が反発姿勢を強めるか、あるいはどこかで妥協するか。2015年の東アジア情勢にも強く影響する問題として浮上している。
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