「定年って生前葬だな」。衝撃的な一文で始まる『終わった人』(講談社)が、売り上げ13万部のベストセラーになっている。本書に登場する男性主人公は、東京大学法学部卒業後に一流銀行に就職。身を粉にして40年間働くものの出世レースに敗れ63歳で定年を迎え、しばらく悶々とした日々を過ごす。
「散り際千金」「散る桜残る桜も散る桜」。本作は、同じ境遇にある中高年のサラリーマンにとって心に響く言葉が随処に登場する。なぜこのテーマを選んだのか。読者からはどんな反響があるのか。作者の内館牧子氏に聞いた。
自由を謳歌できるなんて大間違いです
──強烈なタイトルです。
「まるで自分のことかと思った」というサラリーマンや「夫の気持ちがわかった」という女性まで、読者から幅広く感想が寄せられています。男性の中には「終わった」ことを知られたくないのか、書店で買うときに伏せてからレジに出す人もいるようです。定年を迎えた人やこれから迎える人にとって「終わった」後、つまり定年した後の生活をいかに過ごすかということは、たいへん大きなテーマになっているということを実感します。
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