2014年央から始まった突然の原油安。年間13.8兆円、2億キロリットルもの原油を輸入(14年実績)する日本経済にとって、原油安はプラスとの「歓迎論」が広がっている。
「原油価格が半分になると、雇用者報酬や企業の所得は約3兆円、名目GDP(国内総生産)は約8兆円増える」
内閣府が1月下旬に公表した試算では、原油価格が標準ケースより50%下落した状態が続くと、名目GDPを1年目は5.6兆円(1.2%相当)、2年目には8.2兆円(1.7%)押し上げるという。
11年の東日本大震災以降、赤字傾向が定着しつつあった貿易収支も大きく改善。原油価格が半分になれば、7兆円も輸入金額が減ることになる。アベノミクスのどんな成長戦略より、原油安が日本経済の成長押し上げに効くという皮肉な現象だ。
こうした事態に唯一、顔をしかめているのは日本銀行だろう。デフレ脱却を目指し、2年で2%の物価上昇を目指す日銀にとって、原油安はインフレ率を押し下げる「頭痛の種」。エコノミストのコンセンサス予想によると、15年度のインフレ率は0.84%。2%の目標達成は、岩田規久男副総裁が日銀入りする際に大見得を切った2年はおろか、16年度に入ってもそうとう困難だとみられている。
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