大学は変われるか「コロナ禍3年」運命の分かれ道、質の高い学びの最適解とは 千葉大学DX加速「オンライン併用で対面」の本気

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・オンライン授業には対面にない利益があることは明らかで活用するべき。 とくにオンデマンド型の教材は、学生の都合に合わせて学生自身が選択して活用できる点は重要。 一方で、オンライン授業は同時双方向であっても対話的に行うことは難しく、そのため原則は対面授業としたほうが教育効果は高いと思われる
・対面授業でしか得られない経験や気づきも重要であるため、すべてをメディアに置き換えるというのはよろしくない。しかし、オンライン授業の可能性はまだまだ途上である。自らの授業ではコンテンツの拡充の一方でわかりやすい授業になるように展開することも動画編集のうえで可能になるからである
・オンデマンド型の授業の場合、学生がある程度自由な時間で授業を履修し、わからない箇所があれば、何度も音声付き動画で復習を実施できる点はよいと感じるが、授業内容を更新する際に再度の動画作成を行う必要があり、対面授業の講義資料作成とは異なり、教員側の負担が大きいと考える。そのため、対面での授業を中心として、学生の理解しづらい内容などについてはオンライン授業も活用したい
・学生のメンタル的なサポートをするうえで、学生などからそのようなリクエスト(対面授業を中心にオンライン授業を併用)が多い。授業後のスモールトークができないことで、横の関係性をつくりにくい
出所:千葉大学が行ったアンケート調査結果を抜粋

何より重要なのは、対面授業とオンライン授業を組み合わせて、いかに質の高い学びの実践に結び付けていくかだ。22年度の方針としては、授業の目的や学修効果を考慮したうえで、各教員が授業形態を決定することとし、例えば大規模教室で行う講義形式の科目はオンライン授業で、実験を伴う科目は対面授業でというような一律の規定は設けていない。

「むしろ、今後は大規模教室での講義形式の授業も、知識の部分はオンデマンドで予習し、対面授業で討論などを通じて深掘りするといったアクティブラーニング形式が増えると思います。また、科目の特性に応じて講義とアクティブラーニングをセットにし、週2回または2コマ連続の授業にする、あるいは他学部も含む教員が連携して1つの課題に関連する科目をパッケージ化するといった集約的学修にしていくことも考えています」

今後は対面授業とオンライン授業を組み合わせるのはもちろん、講義形式の授業もオンデマンドで予習し、対面授業で議論するなど、科目の特性に合わせて授業形態は変わるという

さらに、これまで実験を行う科目はどうしても対面授業になりがちだったが、今はバーチャル・リアリティー・システムを使うことで、人間の体の血管、細胞といったミクロの世界や、宇宙・地球科学など、教室では不可能な領域の実験まで行えるようになった。そのため、「実験を伴う科目についても、オンライン授業と対面授業の組み合わせを検討していきます」と小澤氏は語る。

大学全体のDXにつなげる2つの組織を立ち上げ

22年4月には、コロナ禍をきっかけに広がったオンライン授業を、大学全体のDXにつなげるために2つの組織を立ち上げる。

1つは、従来のスマートオフィスを「スマートラーニングセンター」に改め、機能の拡大強化を図る。もう1つは、千葉大の教育改革のパイロット学部である国際教養学部で展開してきたモデルプログラムを基に、全学的な「インテンシブ・イシュー教育プログラム」を企画立案し、運営する「高等教育センター」だ。

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