大阪・吹田市「デジタル・シティズンシップ教育」で起きた変化 抑制的な教育では育たぬ子どもの考える力
来年度は、「コモン・センス・エデュケーション」の教材に加え、経済産業省の「STEAMライブラリー」で紹介されている動画教材も取り入れつつ今年度と同様の授業時間を確保し、小・中学校の9年間で、デジタル・シティズンシップ教育の6つの領域を網羅していけるようプランを立てているという。
保護者も動画教材を見て子どもと一緒に学ぶ
デジタル・シティズンシップ教育の推進をさらに後押しするのが、保護者や家庭との連携だろう。
吹田市では、授業で使うワークシートの最後に授業で視聴した動画教材のQRコードを掲載。保護者は家庭でQRコードを読み取り、子どもと一緒に動画を視聴し家庭で話し合う機会を設け、シートに感想を記入し担任に提出する。
「保護者の方に、子どもたちが学校でどのような学びを行っているのかを知っていただくことはとても大切です。自宅で一緒に動画を視聴して対話を深めることで、保護者の方にも、デジタル・シティズンシップ教育を理解していただくよい機会となっています」(福井氏)
さらに、吹田市立教育センターのホームページでは、豊福晋平氏による市民向けのYouTube動画「1人1台端末時代だからこそ必要な学び デジタル・シティズンシップ教育」を配信。市を挙げてデジタル・シティズンシップ教育に取り組む姿勢が伝わってくる。
「ICT教育やデジタル・シティズンシップ教育といった新しい教育を学校の中だけで完結させてしまうと、保護者や地域の方々にとって、教育の場が“別世界”になってしまう可能性があります」と、草場氏は言う。
「だからこそ、教育の現場から、さまざまな最新情報をあらゆる手段で小まめに発信していくことが必要だと思っています。知りたいことをすぐに調べることができたり、画像を加工したりなど、デジタルネイティブの子どもたちにとって便利で楽しいICT端末ですが、“よき使い手”に育てていくためには、自分をコントロールする自己調整力は欠かせません。デジタル・シティズンシップ教育には、多様性への理解をはじめ、義務教育の中で培うべき資質・能力の育成も、期待することができます。
現実空間と仮想空間がわかりにくくなる中、ウェルビーイングの視点で子ども自身が自分の“生き方”についても主体的に考えられるよう、学校、保護者、地域が連携した取り組みを今後も引き続き進めていきたいと思います」
(企画・文:長島ともこ、注記のない写真:ふじよ / PIXTA)
東洋経済education × ICT編集部
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