デフレとの闘い 日銀副総裁の1800日 岩田一政著 ~当初からデフレ均衡の近傍にあると認識
興味深い点は、日本経済はデフレ均衡の近傍にあると、著者が当初から認識していた点である。もし、デフレ均衡にあるのなら、インフレ率がプラスとなっても、それは一時的かもしれず、次の不況を待って見極める必要がある。07年2月の第2次利上げの際、副総裁の立場でありながら、唯一の反対票を投じたのは、そうした認識も影響していたのかもしれない。
また、デフレ均衡は永続的な均衡ではないため、公的債務の膨張と超低金利政策が継続されれば、政府の予算制約からいずれインフレが生じ、デフレからの脱却が可能だと論じる。理論的にはそのとおりであるが、その際、経済の振幅は相当に激しいものとならないだろうか。インフレの発散を回避するため、日銀のインフレ目標が機能すると主張するが、インフレ発散は財政膨張にも原因があるため、政府の財政健全化策も必要なのではないか、ぜひその点も聞きたいところである。
いわた・かずまさ
日本経済研究センター理事長、東大名誉教授。1946年生まれ。東大教養学部卒業。経済企画庁、西ドイツ世界経済研究所、OECD、東大、内閣府などを経て、2003~08年日本銀行副総裁、09年まで経済財政諮問会議委員。前内閣府経済社会総合研究所長。
日本経済新聞出版社 3150円 433ページ
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