授業が簡単すぎる「吹きこぼれ」を伸ばす本場米国の教育が日本へ ギフテッド教育、米・CTY学習プログラムの中身

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生まれつき特別な才能を持つ子どもたちの能力を伸ばすためのギフテッド教育の必要性が、日本でも叫ばれるようになっている。日本では「落ちこぼれ」の支援は手厚く行ってきた一方、授業が簡単すぎてつまらないといった「吹きこぼれ」に対するサポートは少ないからだ。そんな中、ISAKジャパン代表理事の小林りん氏らが設立した一般社団法人Education Beyondは、多様化する教育ニーズに応えるため、米国のギフテッド教育の1つであるCenter for Talented Youth(CTY)の学習プログラムを日本で展開していくという。

日本では才能を見いだし育てる環境が、いまだ不十分

ギフテッド教育とは、生まれつき特別な才能を持つ子どもたちの能力を伸ばすための教育手法のこと。その目安は、かつて「IQ130以上が目安」などともいわれたが、現在は知能指数だけではなく言語能力や創造力、芸術的才能など、子どもを総合的に見て判断されることが多いという。

昨年7月、日本でも文部科学省が「特定分野に特異な才能のある児童生徒に対する学校における指導・支援の在り方等に関する有識者会議」を立ち上げた。ここでは、ギフテッド教育ではなく才能教育と表現しているが、有識者会議では特異な才能を持つ子どもや保護者、その支援団体に調査を行っており、下記のような事例を紹介している。

・ひらがな、カタカナの読みは3歳で完全に理解しており、漢字のフリガナも読んだのでそこから漢字もどんどん覚えた。語彙も年齢相応以上に豊富。100 ページほどの本なら1〜2時間で読む。図鑑などの内容もはっきり覚えている
・3歳には本から九九などの計算を理解。小3の今は、独学で高校や大学レベルの数学を学ぶ。高校や大学初学レベルの統計検定3級合格。プログラミングや科学的知識も中高レベル
・4歳の頃から図鑑や自然科学系の本を読むことに没頭。5歳の頃から自ら仮説を立てて研究を開始、6歳で全国規模の自然科学コンクールで入賞。7歳で大学の研究施設で研究をさせてもらい新発見のデータを出したため今後、地域の学会や博物館の子供学会で発表予定
・6歳で初めてピアノをひいた時に両手でひけた。ピアノで色々な和音を出して「コード」を自分で見つけていて、後にコード表があるのを知って驚いていた。聞いた音楽を耳コピできる
・幼少期から言語習得が早い傾向があり、大人との会話を好んでいました。興味を持ったことを主体的に深く追求でき、それによって身に付けた発想力と、アイデアを具現化する技能について評価されることが多くありました
・興味のあることにはとても集中力があり、ひとつのことに何時間も没頭することがある など
※事例は多様であり、代表的なものを原文のまま一部を列記。なお、学校段階について、とくに言及がないものは小学校段階として回答されたもの
出所:文科省「特定分野に特異な才能のある児童生徒に対する学校における指導・支援の在り方等に関する有識者会議 アンケート結果まとめ」

だが一方で、こうした子どもたちが学校では「授業がつねに苦痛でした。発言をすると授業の雰囲気を壊してしまい、申し訳なく感じてしまうので、 わからないふりをしなければならない」「学校で習っていない解法をテストなどで解答するとバツにされることが嫌だった。意味があるのかはわからないが、解き方が合っているなら正解にするべきだと思う」「精神的な発達が生活年齢よりも部分的に進んでいるため、同年齢のクラスメートと価値観や感じ方の共有ができない。共感が得られず孤独」など、困難を抱えていることもわかった。

実際、学校現場や大学、民間企業やNPOなどで、こうした子どもたちの才能を伸ばすための支援がスタートしているが、才能を見いだし育てる環境としては、いまだ日本は不十分な状況にあると言わざるをえない。

米ジョンズホプキンス大の学習プログラムCTY

そんな中、先んじてギフテッド教育に取り組んできたのが米国だ。州・学区・学校により状況は異なるものの、小・中学校、高等学校、大学への早期入学、飛び級などの「早修」 が行われるとともに、サマープログラム、各種コンテスト、放課後スクール、学校においても特性に応じた指導などが行われている。

その中の1つに、Center for Talented Youth(以下、CTY)という学習プログラムがある。CTYは、米国の有名難関大学の1つであるジョンズホプキンス大学が作ったギフテッド教育の学習プログラムだ。ほかにデューク大学やノースウェスタン大学などにも同様の教育プログラムが存在するが、1979年に作られた長い歴史のあるCTYは高い知名度を持つ。

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