
――実際に印象に残っている先生はいますか?
高校のエピソードなんですが、僕の高校は住宅街にあったので、文化祭は何があっても19時には終えないといけなかった。それで僕、後夜祭のバンドで大トリだったんですよ。ステージに上がったのが18時50分。演奏中にふと時計見たら、なんと19時過ぎてて。「まずい」と思って近くの先生に声をかけると、「俺、時計持ってないからわかんないや」と言われたんです。
――粋ですね。
もしかしたら本当に時計を持っていなかっただけかもしれないけど、かっこよかったですね。先生の言葉って意外と覚えているもんで。逆に言えばショックな言葉も覚えてる。だから先生は適当なこと言えないなと思っていました。
――ショックな言葉を言われた経験が?
もう笑いのネタですけど、高校の時、自分の部活仲間が校舎裏で花火をしたんです。僕はそのとき教室で寝ていましたが(笑)、ふざけた仲間に「土佐もいました」と告げ口されて。早速呼び出され、結局は僕の弁明と周りの証言で誤解こそ解けたものの、「そういうときに名前が上がることが問題だ」と、部活をクビにされました。

――衝撃的な出来事ですね!
僕はお笑い芸人になるような人間だから当時も笑い話にしていましたが、普通に考えたら、なかなかですよね。この話はさすがに極端ですが、やっぱり先生に言われたことは大人になっても忘れない。先生にはそうした責任もあるのかなと思います。
「できる人」には「分析力」がある
――学校では「勉強できる人」が注目されますが、芸能界で「できる人」はどのような人ですか?
「自己分析と他己分析ができる人」ですね。周りを見て、自分に期待されている役割を理解できる人。うまく振る舞えるかはその日の調子次第ですが、芸能界を生き抜くために分析力は必須です。例えば、フットボールアワーの後藤さんがいる場で、「おい!」とツッコんでも絶対に勝てない(笑)。だから、自分だけでなく他人も分析し理解しておくことが大事です。
――「分析力」は社会で求められる能力ですね。会社員時代はどうでしたか?
会社でも、結局は「自己分析と他己分析」が必要だったと思います。保険会社の営業時代に憧れていた先輩は、保険の知識や資格ではなく、「お客様を楽しませる営業」で勝負していました。要はお笑い担当です。どんなルートでも契約を取れば勝ち。僕も、金融の知識で先輩に勝つのは難しいと判断し、「君が面白いから任せるよ」と言ってもらえる努力をしました。自分と他人を分析して、どうやったら勝てるか計算する意味で、芸能界と同じかもしれませんね。
――こうした「分析力」は学校では教わりませんよね?
問題はそこなんですよ。人間関係の中で自分の立ち位置をなんとなく意識もしますが、授業で学べるわけじゃない。それに、学生のうちはそれぞれの個性もまだ成長中だと思うんです。確立された個性がない中で、学校がそれを強いるわけにもいかない。
――学校で取り扱うには無理があるのでしょうか……。
手っ取り早いのは、社会に出た人の体験を聞くことですかね。何も社会の厳しさや勝ち抜き方を教える必要はなくて、例えば人気TikTokerやYouTuberがどういうふうに有名になったか、とか。それをきっかけに自分の強みを考えてみると、新たな発見があるんじゃないかな。