いずれにしても、JRも近鉄も同じ方向を目指して走っているから、互いの関係はどう見たってライバルである。もちろんどちらが便利なのかは個々のケースによって変わってくるので一概には言えないのだが、こうした「JRvs私鉄」になる場合、日常的な生活路線としては私鉄に軍配が上がることが多い。
というのも、一般的に私鉄のほうが駅の数が多いし、私鉄は百貨店などの商業施設や住宅地の開発を伴う。運転本数も多くてきめ細かい列車種別が設定されていたりして、私鉄のほうが使い勝手がいいのは明らかだ。これは三重県においてもおおむねその通りで、筆者とて名古屋から三重方面に行くときにはだいたい近鉄を使っている。
いちおう比較をしておくと、名古屋―四日市間はJRが480円、近鉄が640円。四日市における駅の場所に目をつぶればJRに軍配があがる。
伊勢神宮参拝の玄関口・伊勢市駅となるとJRの快速「みえ」で約1時間30分の2040円、近鉄特急が約1時間20分の2810円となる。こうして比べると、単線で非電化ながら、思っている以上にJRが健闘しているのかもしれない。
近鉄から分かれたミニ路線
それでも近鉄は駅の数や列車種別のきめ細かさで上回っているし、湯の山線・鈴鹿線といった支線を持っているのも強みだ。
近鉄から経営分離されてしまったが、養老鉄道・三岐鉄道北勢線(三岐線は三岐鉄道のプロパー路線だ)・四日市あすなろう鉄道・伊賀鉄道といった三重県内のローカル線もかつてはすべて近鉄の路線だった。
松阪駅から雲出川沿いに山奥に走ってゆくJRのローカル線、名松線とて本来は名張まで(さらに言えば奈良県の桜井まで)結ばれる予定だった。その夢が叶わなかったのは現在の近鉄大阪線が先行してしまったからだ。こうした点を含めてみても、やはり日本一の大私鉄、三重県は近鉄王国の傘下にあるといっていい。
ただ、JRと近鉄の関係、関西のそれとは少し違うのではないかと、三重の鉄道を旅していて思うのだ。
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