老舗企業の破産が映す、「100均業界」の激動 「デフレの勝ち組」と呼ばれた業界に異変

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が、2008年のリーマンショック以降、デフレが深刻化すると、スーパーやドラッグストアなどが目玉商品を100円未満に値下げする戦略を取り始め、価格競争力を失った。大創産業は今も業界首位の座を守っているが、国内の既存店は減収トレンドが続いているとみられる。

こうした中で、井上工業は量販店やドラッグストアなどにも販路を広げ、生き残りを図った。しかし、依然として最大の取引先だった100円ショップへの即納体制を整えるため、見込み生産が常態化。信用調査会社によると、その結果、在庫負担が膨らみ、資金繰りが逼迫した。負債が33億円超まで拡大し、今回の事態に陥ったという。

際立つセリアの躍進

100円ショップ業界では大創産業がかつての勢いを失い、3位のキャンドゥや4位のワッツも消費増税後の反動減から抜け出せないでいる。

一方で、2位のセリアの躍進が続いている。同社はファッション性の高い雑貨を低価格で販売することで、女性を中心に顧客基盤を拡大。飽和感が漂う100円ショップ業界で異彩を放つ存在だ。

セリアの河合映治社長は「消費増税を機に、消費者のニーズは変化している。それを迅速につかむことのできる企業だけが成長できる」と意気込む。

ドイツ証券の風早隆弘シニアアナリストも「円高局面と異なり、円安を前提にすれば、顧客基盤に支えられたバイイングパワーを持つ小売業者しか、安売り競争では生き残れない」と指摘する。

かつての大創産業は、メーカーから商品を買い切り、小売り側がリスクを持つ販売スタイルで、豊富な物量と在庫を武器に成長した。だが最近は、セリアの成功に倣い、POSデータを活用して商品の改廃を迅速化し、自社在庫を圧縮している。

それはつまり、下請けメーカー側にも、消費者ニーズの変化に即応できる、スピード感が求められているということでもある。こうした時代の荒波に対応できないメーカーが、第2、第3の井上工業となる可能性は大いにある。

「週刊東洋経済」2014年10月11日号<10月6日発売>掲載の「核心リポート04」を転載)

岡本 享 東洋経済 記者

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おかもと とおる / Tohru Okamoto

一橋大学社会学部卒。機械、電機、保険、海運業界などのほかマーケットを担当。2013~2015年『会社四季報プロ500』編集長、2016年「決定版 人工知能超入門」編集長、2018~2019年『会社四季報』編集長。大学時代に留学したブラジル再訪の機会をうかがう。

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