東武SL、大樹&ふたら「スリートップ戦略」の将来 コロナ禍にひるまず、地域とのかかわりを重視

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もともと日光・鬼怒川には、日光東照宮をはじめとした世界遺産や華厳の滝や鬼怒川温泉など雄大な自然の観光資源が豊富にあり、周辺の観光施設や路面電車(現在は廃止)、バス路線も東武グループが行ってきた。つまり、東武グループにとって日光・鬼怒川の存在は一心同体であり、この地域の衰退は直接東武グループの存続に関わってくるといっても過言ではない。

SL大樹ふたら(筆者撮影)

東日本大震災が起きた2011年度、同社の業績は大きく落ち込んだ。2011年4〜6月期の売上高は前年同期比4.9%減の348億円、前年同期比24.6%減の営業利益は79億円。これは震災の影響で国民全体が外出を控えたことや消費の落ち込み、また福島第一原子力発電所の事故によって実施された計画停電による列車の運休や営業活動の制約等によるもので、東武鉄道に限らず、日本全体の経済が著しくダウンしたことによるものであった。

東武鉄道の日光・鬼怒川への観光利用も大きく減少し、地域の経済も苦難を強いられてしまった。東武グループと日光・鬼怒川地区の観光は、震災からの復興をシンボルに「蒸気機関車を誘致し、観光促進を行う」というプロジェクトを開始した。大樹の運行開始にはこんな背景があった。

鉄道各社が協力

蒸気機関車の運行を支えるため、社員を大井川鉄道や秩父鉄道、真岡鉄道、JR北海道に派遣し、蒸気機関車を取り扱う訓練を行った。

下今市駅に機関庫を設置したほか、機関車を方向転換させるターンテーブルも、下今市駅と鬼怒川温泉駅に設備した。これらの施設の一部や車両も、協力してくれた鉄道会社から譲渡・借用されたものである。その時の写真や資料を見ると、華々しくデビューした裏側で、大変な苦労があったのだとひしひしと感じた。

大樹が運転を開始後、2017年度の東武鉄道の業績は売上高が前年同期比1.9%増の2828億円、営業利益は前年同期比8.1%増の345億円まで回復した。そして大樹の運転開始というニュースは、日本全国の観光業界に大きな影響を与えたのも事実である。また同時に「東武ワールドスクウェア駅」の開業や特急「リバティ」も運転を開始したことも相まって、地域の回遊性が高まった影響もあるだろう。

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