東武SL、大樹&ふたら「スリートップ戦略」の将来 コロナ禍にひるまず、地域とのかかわりを重視

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東武鉄道のSLプロジェクトは、地域の活性化を促し、鉄道の保存と有効活用を目的とはしているが、昨今は新型コロナウイルス感染症の影響で苦戦が続く。

ディーゼル車も運行では大活躍(筆者撮影)

コロナ禍は大樹の運転にも大きく影響し、2020年4月11日からは3カ月間の運行休止措置が取られた。しかしながら同年7月4日からは感染防止対策を施し、座席数も3分の2に減らして運転を再開した。

2021年11月4日からは新たな施策として、JR四国で活躍した12系客車に展望デッキを備え、リニューアルした車両をSL列車の新たな目玉として運転を開始した。展望車は最後尾に連結されるタイプではなく、3両編成中の2両目(中間)に連結され、側面から展望を楽しむタイプである。車内の席は64席となり、昭和30年代の懐かしい国鉄旧型客車をイメージしている。

地域と鉄道のかかわりを重要視

また展望車には、車体下に車外スピーカーを設置しており、主に沿線からの「おもてなし」(列車に手を振ってくれる人など)に対して、感謝を伝えるツールとして、メロディホーンを鳴らすことができるようになっている。

客車の外観も茶色(ぶどう色)と青色と2両が用意され、日によって連結する展望車を変えるというこだわりだ。

さらに12月24日、南栗橋車両管区SL検修庫内で、同社3機目となる蒸気機関車「C11 123号機」の安全を祈願する火入れ式が行われた。来春から「SL大樹」として日光・鬼怒川エリアを走る予定だ。国内では唯一、同一形式車両によるSL3機体制が実現し、 今後3重連運転が見られる可能性が高く、期待したい。

東武鉄道はコロナ禍においても、地域と鉄道のかかわりを重要視し、出かける楽しさや人の温かさを提供しているように思える。今回の展望客車の導入が、日光・鬼怒川への旅にさらなる価値を見出すことは間違いない。

渡部 史絵 鉄道ジャーナリスト

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わたなべ・しえ / Shie Watanabe

2006年から活動。月刊誌「鉄道ファン」や「東洋経済オンライン」の連載をはじめ、書籍や新聞・テレビやラジオ等で鉄道の有用性や魅力を発信中。著書は多数あり『鉄道写真 ここで撮ってもいいですか』(オーム社)『鉄道なんでも日本初!』(天夢人)『超! 探求読本 誰も書かなかった東武鉄道』(河出書房新社)『地下鉄の駅はものすごい』(平凡社)『電車の進歩細見』(交通新聞社)『譲渡された鉄道車両』(東京堂出版)ほか。国土交通省・行政や大学、鉄道事業者にて講演活動等も多く行う。

 

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