部下の不満を組織の力に変える「最強の褒め方」 結果だけでなく、行動や思考も認めてあげよう

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不満を提案に変えるために、「じゃあ提案して」とか、「反対意見があるなら代案を出してくれ」と要求したことはないでしょうか?

働く時間が長いなら、生産性を上げて早く帰れる方法を提案してくれればいいのです。仕事の進め方が悪いなら、どうすればより良い進め方になるか提案してくれればいい。それら1つひとつの不満が組織をより良くするタネになるわけです。

ところが、「じゃあ提案して」と部下に矛先を向けたときに、部下がどう思うか。

(なんだ、上司、何もしてくれないじゃん……)(結局、変える気がないんだな)と、本来上司がやるべきことを部下に押しつけた、と思われてしまうことが多いのです。なぜなら、不満が不満のままで提案できない部下は、不満の解消を「自分の役割」だと思っていないからです。

不満の解消を「自分の役割」と思わない

不満を解消するのは会社と上司の役割であり、自分の役割ではない。

このようにはっきりとした考えを持っているわけではないにしても、職場の環境を作るのは自分ではなく、会社や上司であり、自分の責任範囲ではないと考えているわけです。

言い換えれば、部下が「他責」の状態であることが、不満が不満のままで終わっている原因なのです。部下の他責の姿勢を改善する前に、ただ提案を求めてもうまくいかないのはそういう理屈です。

そこで、部下の不満を提案に変えるには、「不満を改善することが、部下(自分)の役割であると認識させること」が肝になってきます。では、どうしたら部下の他責の姿勢を変えることができるのでしょうか? 部下の他責の姿勢を変える技術――それは、「褒める」技術です。

意外に思われるかもしれませんが、褒めるのが下手なリーダーの部下は、物事を他責にしてしまいがちです。あなたの部下が不満を不満のままにしているのは、あなたの「褒める力」が弱いからなのです。褒める技術を使えば、あなたの部下は不満を提案に変えるようになります。

具体的に見てみましょう。

皆さんは、褒める「目的」を考えたことがありますか? 何のために褒めるのか、多くの場合、その目的を履き違えてしまっています。

部下のモチベーションを上げるため、部下のやる気を引き出すため、と答える人が多いと思いますが、そうではありません。私は、褒める目的は「部下の良い行動を習慣化するため」だと定義しています。

人は、褒められたことを繰り返そうとします。部下は、自分がした行動が良い行動だったのか、悪い行動だったのか、自分では判断できないのです。上司の指示で資料を作成したとすると、その資料は、上司から見れば、「ここは表現が間違っている」「ここはうまく作れている」と良い部分と良くない部分がはっきりとわかると思いますが、部下は「これでいいのかな?」と判断できません。

そこで、上司が「ここは良かったよ」「ここはもっとこうしてほしい」と伝えることで、部下は自分の行動が良かったのか悪かったのかを知ることができます。つまり、上司が褒めないということは、部下は自分の走っている道が正しい道なのかどうかわからず運転しているようなものなのです。

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