昭和香る「今日から俺は!!」が若者掴んだSNSの技 日テレプロデューサーが明かす綿密な戦略

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SNS戦略がうまくいったことで、「SNS活用は視聴率や集客に影響したか?」という質問をよく受けます。正直、直結するデータが存在しないので、実際にはわかりません。しかし、公式アカウントのフォロワーが増え、“公式自体がインフルエンサー”になったことで、SNSに何かを投稿すると、即日ネットニュースに上がる循環が生まれました。

こちらで記事を仕込んでいるわけではないので宣伝色も薄く、おのずと露出量も増え、ただただ「連日話題になるドラマ」というイメージが定着していきました。ドラマを見ていない方が「見ないと話題についていけない」と認識してくれるようになった実感はあります。実際、18年のグーグル検索ワードでは、「今日から俺は!!」がドラマで日本一だったそうです。視聴率が右肩上がりになったのは、中身の面白さが前提ですが、このようなSNSの効果も大きかったのだろうと推察されます。

受け手の喜ぶ顔をどれだけ想像できるかが要

ドラマ制作自体もそうなのですが、エンターテインメントは、受け手の喜ぶ顔をどれだけ想像できるかが要だと思います。SNSも同じで、そのドラマの世界観を守りつつ、フォロワーの顔が見えないからこそ、その顔や想いを具体的に想像して、言葉を発することが求められます。

例えば、「今日から俺は!!」の放送中、「面白いけど、娘が喧嘩シーンの血を『ホンモノ?』と怖がっている」という感想をいただいたときは、あえて裏側の「血のりオフショット」を発信して、「血のりだよ~」と安心させたり、「暴力シーンを子どもがマネする」という悩みを見かけたときは、「ツッパリとは暴力をふるうことではなく、不条理な暴力から仲間を守るために立ち向かえる熱い奴らのこと」と発信したりしました。後者はツイッター投稿後、一気に500万インプレッションを超え、宣伝担当から「有料広告に匹敵する効果だ」と言われました。

ネットの普及した現代は、リアルとリアリティが混在しがちだからこそ、フィクションをフィクションたらしめる言及に、安心してくれる方も多いのだと思います。その安心感は、ドラマ自体への信頼にも繋がります。最近では、誹謗中傷ばかりが取り沙汰されるSNSですが、いわゆる炎上とは逆の、そうした手段でも活用できるし、活用していくべきだと思うのです。顔が見えない繋がりだからこそ、“想像力をプラスに働かせる努力”は、これからも惜しまずにやっていきたいです。

今年10月からスタートする土曜ドラマ「二月の勝者」は、生まれたときからSNSがある情報飽和時代を生きる子どもたちを、大人が中学受験を通してどのように導けるかを追求しています。疲弊した世の中の起爆剤になれば、と企画しました。『今日から俺は!!劇場版』に続き、柳楽優弥さんの怪演をご堪能ください……と、宣伝で締めるのは、もはや私の病気かもしれません。

高 明希 日本テレビ 情報・制作局ドラマプロデューサー

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こう・あき / Aki Ko

2007年日テレアックスオン入社。11年に企画した「らんま1/2」でドラマ初プロデュース。2013年「35歳の高校生」「人生がときめく片づけの魔法」の企画立案を機に、日テレプロデューサー兼務。福田雄一氏を初めてゴールデン・プライム帯全話脚本演出で抜擢し、「スーパーサラリーマン左江内氏」「今日から俺は!!」「親バカ青春白書」を企画・プロデュース。

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